2016年7月15日金曜日

第4回 訴訟手続と強制執行手続

    

みなさん こんにちは

請負契約の代金を払ってくれない相手方、そして話し合いについては誠実に対応する姿勢をみせない相手方に対して、法的な手続を行うこともやむを得ないと、(依頼者は)判断しました。

そして、訴訟で勝訴して裁判所の判決がでても、相手側がその内容に従わない場合 どうすれば良いのでしょうか?

    訴訟提起
    
「DさんがE社の依頼に応じて、誠実に請負を履行したのに、
    不誠実な理由で約束を履行しないE社に約束を守らせるには
    任意の交渉ではムリなようです。
    早速手続きにかかります。」

    その後、裁判では、E社の弁護士は「目的物の引渡しを受けていない」
    と主張しましたが、裁判官は目的物を引き渡した記録やE社が代金の
    支払い義務を認識していたこと、等を証拠として認定したので、
    E社の主張は通らず、「E社はDさんに対して50万円を払え」との
    判決が出ました。

    その後、E社は控訴せず、判決は確定しました。
    (E社の弁護士は控訴してもE社に有利な判断は出ないと考えたようです。)
    そしてE社に「代金を払え」と請求しましたが、E社は代金を支払いません。

    強制執行

    「判決が確定しても払わないことってあるんですか?」
    「そうですね。
    コンプライアンスのしっかりした企業や資金がある企業であれば払うケース
    が多いのですが、資金や資産が脆弱な企業や支払をしたくない考えの社長
    が全て取り仕切っている会社では、支払われないこともあります。」

    「判決が出ても代金が支払われないと意味がありませんね」
    「その通りです。
    確定した判決は債務名義と言ってDさんの債権が正当な権利として認められ
    なおかつ、強制執行を申し立てることができるのです。
    E社は支払い請求しても支払わないようなので、強制執行の申立てをしましょう。

    強制執行には大きく分けて不動産に対する執行動産に対する執行債権に対
    する執行があります。

    Dさんから面談時に聞いた情報で、E社の本社は賃貸物件で自社ビルでなく、
    また、他に不動産はないとのことで、不動産執行は除外されます。

     法人に対する動産執行について

    また、動産執行ですが、具体的には執行官が会社に乗り込んでいって、
    会社内の動産に対して差押をする執行手続きです。
    債務者の生活に必要な家財道具は差押は禁止になっていますが
    (民事執行法131条)会社の場合は生活に必要な物品は通常考えられません。

    民事執行法131条により、実印や商業帳簿についても差押は禁止されてい
    ますが、個人の債務者の居宅の動産に比較すると差押可能な動産の範囲
    は広がります。

    もし会社に金庫があってその中に金員や有価証券がある場合には差押が
    できます。
    (金員等は動産となります。
    個人の場合のように差押禁止の金銭66万円までの適用はありません)

    しかし実際は、動産執行は回収目的としてはほとんど利用されていません。
    ただ、執行官が債務者の家や営業所に強制的に入り込んで、調査執行
    する権限を持っているので、債務者の心理的な負担は(個人家屋に動産
    執行する場合は特に)大であり、債務者への精神的な負担を加えるため
    の方策として利用されることもあります。

    債権回収が目的でない動産執行の場合
    司法書士が過去動産執行申立の実務をしていた
    (司法書士が勤務していた)会社は、回収が目的ではなく、不良債権や
    回収不能債権を税務上貸し倒れ処理(損金処理して税法上の対象資産
    から控除するため)するための目的でやっていました。
    (国税当局としては回収不能ですといわれても、本当に回収不能なのか
    どうかの判定についてしっかり回収行為(法的手続きまで回収)をしたうえ
    でないと不良資産とは認めない。)

    債権回収を目的とする動産執行
    極くレアなケースでは、(司法書士の実務経験から)法人の債務者で
    何月何日の何時頃に銀行に納めるために債務者の本店に一時的に
    売上金を集めるという情報が入りました。
    よって、執行官にその時間帯を指定して現場に行ってもらって、
    現金を差押えたという事例があります。
    (勿論執行官は金庫をあけさせる権限がある)

         よって、実際は、債権執行がよく利用されています。
    債権執行とは具体的にはE社の名義の預金口座やE社の売掛金等に差押
    をすることです。

    E社の取引銀行やE社の取引先でDさんはご存じないですか?」
    「はい、その場合強制執行はできませんか?」

    「いえ、できます。
    しかし、その場合は推測で銀行口座を指定して申立てするので、
    確実に執行できるかどうかわかりません。」
    「あてずっぽうということですか?」
    「はい、しかし債務者の公にしている情報や他の情報から推測して
    指定しますが、結構当たることもあります。勿論外れることもありますが。」

    「私の友人が同じデザイナーでE社と取引があるので、
    何か情報があるかを聞いてみます」

    その後、Dさんの聞いた情報を基にE社の口座を差押えることができ、
    請求金額全額について回収ができました。

次回は「敷金返還Q&Aその1 大家さんが変わった場合の敷金の返還」についてです。

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